太平洋戦争末期の広島。元旅芝居の花形役者で両足を脱疽で切り落とした“父”と生まれつき腕のない“僕”、結合双生児として生まれ死んだ 片方を切り落とされた“桜”、小人症の“昭助兄さん”、膝の関節が逆に曲がる牛女の“清子さん”。血のつながらない家族である5人は川面にもやった舟を住
処にし、見せ物興業で糊口をしのいでいる。悲惨な時代であっても好事家の旦那衆のおかげで食べるに困っていなかった一家は新たな見せ物にするべく下駄屋で 生まれたくだんを買いに岩国に出かける。
くだんを手に入れることはできなかったが、その日から“僕”は不思議な夢を見るようになる。どうやらそれはくだんが見させた夢らしい。やがて、一家と対峙したくだんから驚くべき事実が語られる。